胃腸炎

胃腸炎とは

胃と腸に炎症が起き、胃のみであれば胃炎、腸のみであれば腸炎と診断されます。炎症が起きる原因の大半は、細菌やウイルスといったもので、代表的なものとしては、ノロウイルス、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ロタウイルス等があります。また、毒キノコや寄生虫が混入している食物、有害な化学物質を食べるといったことで発症することも考えられます。なお、食中毒が起きたというニュースをよく目にするかと思いますが、このケースも胃腸炎として数えられます。

代表的な症状として、細菌やウイルスに感染することで発症します。多くの場合、体内でこれら病原体が1~3日程度潜伏した後、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢等が現れるほか、易疲労感や発熱等の全身症状がみられることもあります。加えて、長い期間、嘔吐や下痢が続くと、体内の水分等が減って、脱水症状や電解質が喪失することにより、症状を引き起こすようになります。

消化器疾患のイメージ画像

検査について

発症の原因を調べる検査としては、糞便に含まれる細菌やウイルスを調べる便検査があります。この場合、2~10日程度、結果が判明するまでにかかることがあります。さらに、胃腸炎の様子を直接観察する胃カメラ、大腸カメラ等の内視鏡による検査は、胃腸内部の状況がモニターを通してわかりますのでかなり有効な検査と言えます。

治療について

治療法としては症状に対する治療、つまり、薬物療法による対象療法となります。嘔吐であれば制吐薬、腹痛の場合は鎮痙剤、下痢を訴えているのであれば整腸剤を使用していきます。加えて、あまりにも下痢がひどいとなれば止痢薬を用います。また、細菌感染による胃腸炎ということであれば抗生物質による治療となることもあります。

食事面では、できるだけ消化の良い食品を摂るようにし、辛すぎる等の刺激が強い食べ物、脂質が多い食品、アルコール類は避けます。さらに、激しい腹痛や血便の症状がみられれば、絶食をする等して、逐一体の状態を把握していきます。

また注意点として、脱水症状にならないようにしていくのも重要です。経口摂取での水分補給に問題がなければ、水やお茶、スポーツドリンクや経口補水液等を飲み、常に水分や電解質の不足を補給してください。

感染性腸炎

感染性腸炎とは

腸内が、細菌、ウイルス、寄生虫等の病原体によって感染し、それによって炎症が起きる等して様々な症状が起きている状態を言います。原因となるウイルスとしては、ロタウイルスやノロウイルス、腸管アデノウイルス等があります。さらに、細菌であれば、腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌等が挙げられます。このほか寄生虫には、クリプトスポリジウム、アメーバー等が感染性腸炎を引き起こすことがあります。

主な症状としては、嘔吐・吐き気、腹痛、下痢等で、発熱も現れることもあります。強い症状であると38℃以上の高熱、あるいは血便もみられるようになります。ウイルスが原因の腸炎の場合では、吐き気・嘔吐の症状が強く、寄生虫による感染であれば、長く下痢の症状が続きやすいとされています。

検査について

検査としては、検便をすることで、原因となる菌の有無を調べていきます。さらに、医師の判断によって血液検査も行います。また、下痢や血便が続いている場合は、下部消化管内視鏡(大腸カメラ)を用いて、直腸や結腸の内壁の様子も観察していきます。

治療について

どのタイプの病原体であっても特効薬はありません。基本的には、これといった治療をしなくても治まっていきますので、腹痛、嘔吐・吐き気、下痢等の消化器症状を和らげていく対症療法をしていくことになります。ただ重篤な症状がみられる、高齢者や小児が発症しているという場合は、原因菌に対して抗菌薬を用いることもあります。

さらに治療中は消化の良い食事をしていくほか、あまりにも下痢や嘔吐の症状がひどい場合は絶食することもあります。また下痢や嘔吐等によって、体中の水分が瞬く間に排出されます。つまり脱水症状が起きやすくなるので、水やスポーツドリンク、経口補水液等で水分と電解質の補給は欠かさないようにします。

胃食道逆流症

胃食道逆流症とは

主に胃液を含んだ内容物が食道の方に逆流してしまう症状のことを指します。通常であれば、胃の中の胃液や消化物は、胃と食道の間にある下部食道括約筋の筋肉が働くことで、食道への逆流は防がれていますが、この筋肉の機能低下や胃内で胃酸が過剰に分泌する、食道の知覚過敏等が原因となって発症するようになります。上記のような状態になる原因は一つではなく、喫煙、コーヒー、アルコール、ストレス等が挙げられます。

ちなみに、胃食道逆流症は、二つのタイプがあり、食道付近で起こるとされる定型症状と食道以外の臓器で起きる非定型症状に分類されます。前者では、胸やけ、ゲップ、呑酸等がみられます。後者では、声のかすれ、虫歯、胸痛、睡眠時無呼吸症候群、中耳炎、喉付近の違和感、喘息のようなしつこい咳等が見受けられます。

検査について

定型症状を訴えている患者様の場合は、検査なしで診断をつけることもあります。ただ医師が診断を確定させるために検査が必要と判断すれば、上部消化管内視鏡の胃カメラ、バリウムを用いた胃内のX線撮影、食道内の酸性度を24時間測定の胃酸分布測定等を行います。

治療について

主な治療としては、胃酸の分泌を減らすための薬物療法となります。加えて、生活習慣の改善として、禁煙、高脂肪食の食事やアルコールやカフェインの過剰摂取を控える等、胃酸が逆流しやすくなるリスクをできるだけ減らすことが重要です。

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは

食道に胃内の胃酸が逆流することによって、炎症が食道に起きている状態を逆流性食道炎と言います。食物を消化する胃液は、酵素や酸性度の強い塩酸等が含まれているのですが、構造上、胃内や十二指腸はこうした酸性の液体にも耐えられるようになっています。ですが、胃液がそのほかの臓器に付着した場合、それに対する耐性はありません。まず、食道と胃の間には下部食道括約筋という筋肉があるのですが、この筋肉の働きによって、胃からの逆流を防止しています。しかし、何かの原因で同筋肉が緩む等の機能低下することにより、胃液が食道にも漏れる、若しくは逆流する等して、食道に炎症が起き、様々な症状が見受けられるようになります。

下部食道括約筋が機能低下する原因としては、喫煙、高脂肪を摂る、アルコールやカフェインの過剰摂取、ベルト等で腹部を強く締める、ストレス等が挙げられます。

さらに、逆流性食道炎が起きることで、吐き気、胸やけ、胃のむかつき、呑酸、胸痛、慢性的な咳等の症状が現れるようになります。病状を悪化させると、食道の粘膜が胃の粘膜に変化するバレット食道、吐血、食道の狭窄等の症状が見受けられるほか、食道がんを発症させるリスクも高まりますので、上記の症状等に心当たりがある場合は、お早めのご受診をお勧めします。

検査について

診断の検査としては、胃酸分布測定、上部消化管内視鏡の胃カメラ、バリウムを使用した食道中心のX線撮影等を実施していきます。

治療について

主に薬物療法による治療を用います。胃酸の分泌を抑制する薬を使用し、主には、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬等です。さらに、日頃の生活習慣を見直すことも重要で、禁煙、高脂肪食の摂取を控える、食べたらすぐに横にならない、お酒やカフェインの過剰に摂り過ぎないといったことも大切です。

機能性胃腸症

機能性胃腸症とは

胃腸炎でよく見受けられる症状があるものの、診断をつけるために胃カメラ 等の検査をしてもそれらしい病変等が見られない場合に考えられるのが機能性胃腸症です。現時点で、原因については特定できていませんが、胃の運動機能の低下、暴飲暴食 等の食生活、ストレス等の生活習慣の乱れが考えられます。

主な症状ですが、同疾患は大きく食後愁訴症候群、心窩部痛症候群の2つのタイプに分けられます。それぞれの特徴ですが、前者は食後に腹部が張る、違和感が見受けられるとされるものです。この場合、少しの食事でお腹がいっぱいになるので通常の食事が摂れない、食事の量に関係なく膨満感に見舞われる、胃もたれがする等です。日本では同疾患の患者様によくみられるタイプです。一方、後者は、みぞおち周辺が痛む、あるいは焼けつく等、みぞおち中心に症状が現れるようになります。

検査について

患者様が訴える症状によって、腹部超音波検査、腹部X線撮影、胃カメラ、血液検査等から、医師が必要とされる検査をしていきます。病変等器質的なものが認められない場合には、機能性胃腸炎と診断されることがあります。さらに、心理的なストレスが関係していると判断されれば、心理テストを受けていただくこともあります。

治療について

主な治療としては、薬物療法と生活習慣の改善になります。薬物療法としては、胃や腸等の消化管の運動機能を改善する抗ドパミン薬 等の薬、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬 等の薬を用いていきます。

また併行して生活習慣を見直すことも重要で、原因がストレスであれば、ストレスを溜めない、あるいは発散しやすい環境を構築する、また、禁煙、暴飲暴食、早食い等の食生活を改善する、睡眠時間を十分にとる等もしていきます。

胃潰瘍

胃潰瘍とは

胃酸によって、胃の内壁がダメージを受け、炎症を起こし、その症状がさらに進行して患部がただれ、そして一部がえぐれてしまっている状態になる状態を胃潰瘍と言います。

そもそも胃粘膜は強い酸性にも耐えられる性質です。しかし、胃液に含まれる胃粘膜と消化酵素を保護する粘液のバランスが、何かしらの原因によって乱れてしまうと胃粘膜が損傷を起こすようになります。この状態を放置し続けると胃潰瘍まで発症することがあります。

なお胃粘膜が損傷する主な原因の胃内のバランスの乱れについては、ピロリ菌の感染、非ステロイド性抗炎症薬を必要以上の使用、ストレス、たばこ、アルコール等の嗜好品の過剰摂取によって引き起こされるのではないかと言われています。

主な症状としては、胸やけ、吐き気、吐血、呑酸、みぞおちでの鈍い痛み、潰瘍からの出血によるタール便と呼ばれる黒色便等です。また、病状が悪化すると胃に穴が開く穿孔が起きることがあります。この場合、手術が必要になることもあります。

検査について

胃潰瘍が疑われる場合、胃の内部を観察する胃カメラの内視鏡検査、患者様がバリウムを飲んだ状態でX線撮影をし、潰瘍の位置を確認するバリウム造影検査を行います。また、胃潰瘍の多くの原因はピロリ菌の感染によるものなので、尿素呼気試験や胃カメラの際に胃粘膜の一部を採取して、ピロリ菌による感染の有無を調べる検査をすることもあります。

治療について

治療に関しては、主に薬物療法となります。具体的には、胃酸を抑制するプロトンポンプ阻害薬等の薬を用います。そして、検査の結果、ピロリ菌に感染していることが判明した患者様には除菌治療を実施していきます。

因みに、潰瘍が出血していれば、内視鏡で止血を施していきます。このほか、大量の出血がみられ、胃穿孔が見受けられる時は、外科的治療による手術療法が検討されます。

十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍とは

胃と小腸の間に十二指腸はあります。胃から運ばれてきた食物と膵液や胆汁を混ぜ合わせることで消化を促進させ、加えて、腸へ運ぶ働きをします。十二指腸は胃と同様に、構造上粘膜は強い酸性にも耐えうるようになっています。しかし、十二指腸内の粘液と消化酵素・塩酸のバランスが崩れることで、粘膜は胃酸等によって傷つくことになります。このダメージによって、ただれや炎症が生じ、また、症状が悪化すると潰瘍を引き起こし、これを十二指腸潰瘍と言います。同疾患の特徴としては、20~40代の男性の患者様が多いです。

発症の原因としては、ピロリ菌の感染、過度な非ステロイド性抗炎症薬の使用、喫煙や多量の飲酒、カフェインの過剰摂取、ストレス等が挙げられます。

よく見受けられる症状として、嘔吐・吐き気、みぞおちが痛む、食欲不振、吐血等で、潰瘍による出血があれば、黒色便が見受けられることもあります。

検査について

十二指腸潰瘍が疑われる患者様の検査として、胃カメラの内視鏡検査やバリウム造影検査が実施されます。さらに、ピロリ菌に感染している可能性もあるので、感染の有無を確かめる胃カメラで一部組織を採取しての生検等検査も実施していきます。

治療について

治療としては、薬物療法が中心です。主に、H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬等の胃酸を抑える薬を用います。また、検査でピロリ菌に感染していることが判った場合は、それに対する除菌治療を実施していきます。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

患者様が下痢、便秘、腹痛等の症状を訴えるものの、診断をつけるための詳細な検査をしても原因が特定できなければ、過敏性腸症候群が考えられます。すなわち、消化器官には、潰瘍や炎症等の異常は現れないということになります。

このように病変等がなければ、食生活や生活習慣の悪化、ストレスによって消化器症状が起こると考えられるのですが、もとより腸というのは緊張・不安やストレスといった精神面の影響を直に受けやすい器官でもあります。この場合の発症メカニズムについては、緊張・不安やストレスというのは、自律神経を乱すようになるのですが、やがて腸の運動異常等を引き起こし、下痢や便秘等の症状としてみられることがあります。これが過敏性腸症候群です。

主な症状ですが、3つのタイプがあります。下痢、便秘、下痢と便秘を繰り返す等のタイプがあると言われ、この3つのどのタイプにも当てはまらない機能異常を分類不能型と診断されます。因みに特徴として、男性は下痢のケースが多く、女性には便秘のケースが多いとされています。

検査について

何らかの検査で過敏性腸症候群と診断をつけることはありません。ただ診断をつけるためには、他の病変がないことを確認する必要があるので、バリウム造影検査、腹部CT大腸カメラ等の画像検査をすることがあります。

治療について

患者様が訴えている症状を抑える治療法としては、腸を整える必要があれば整腸剤、下痢の症状があれば下痢止め等を用いていきます。しかし、根本的な症状の解決とはなりません。そのため、発症の原因がストレスと考えられる場合は、ストレスを緩和させるために、抗うつ薬や抗不安薬を用いることもあります。また、腸内環境を改善するにあたって、日頃の生活習慣を見直すための運動療法や食事療法も行うようにします。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは

小腸や大腸の粘膜に炎症、ただれ、潰瘍等を引き起こす慢性的な疾患を炎症性腸疾患と言います。IBD(Inflammatory Bowel Disease)と略称されることもあります。発症の原因としては、腸内細菌のバランスの乱れ、遺伝的要因、免疫機能の異常等が想定されますが、原因を明確に特定できるわけではありません。因みに、代表的な炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎やクローン病があります。各々の特徴は次の通りです。 

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は、炎症が大腸の粘膜にのみに発生する疾患です。この場合は、炎症が直腸から起き、結腸に向けて逆流する形で広がっていきます。炎症が進行するにつれて、ただれ、潰瘍となるわけですが、一度発症すると症状が慢性的に改善と改悪を繰り返すようになります。主な症状は下痢、血便、けいれんを伴う腹痛です。

クローン病とは

クローン病は原因が特定できない非特異性腸炎です。そして、消化管の中であれば、口腔から肛門までのどの部位でも発症することがありますが、多くは小腸や大腸で縦長の特徴的な潰瘍が見受けられるようになります。その後は、長期間、慢性的に炎症を繰り返すようになります。患者様は10~20代の若い世代が多いのも特徴です。代表的な症状としては、腹痛、下痢、発熱等で、加えて、全身の倦怠感や体重減少が現れることもあります。

検査について

炎症性腸疾患が疑われる患者様に診断をつけるための検査として、大腸の様子を観察する大腸カメラの内視鏡検査、炎症の程度を確認するための血液検査、検便、大腸や小腸にバリウムを注入し、その部位をX線撮影し、それぞれの粘膜の様子を調べる消化管造影検査を行っていきます。

治療について

炎症性腸疾患に対する特効薬は現時点ではありません。治療としては、主に薬物療法となりますが、抗炎症薬を使用して、炎症を抑えます。さらに、発症の原因として、過剰に免疫が反応し、腸が炎症を起こすことがあり、それに対する治療として免疫抑制薬を用いることがあります。そして、原因が細菌であれば抗菌薬を用います。また、強く腹痛や下痢等の消化器症状が出ているのであれば、鎮痛薬や整腸剤等による対症療法を行います。

虫垂炎

虫垂炎とは

右下腹部に位置する盲腸から突き出ている紐状の虫垂に炎症が起きている状態を虫垂炎と言います。虫垂炎は盲腸と同じと認識されている方がいると思われていますが、医師が同疾患によって原因とされる部分を切除しようと開腹した際に、炎症が盲腸まで及んでいるといることも少なくなく、そのような経緯から、虫垂炎は盲腸あるいは盲腸炎と呼ばれることが多くなりました。

つまり、細菌が虫垂に感染することで炎症を起こすのですが、それによって発症初期はみぞおち周辺に痛みを感じ、時間の経過と共に右下腹部の腹痛、発熱や高熱の場合は、穿孔性腹膜炎や膿瘍形成も発症することが珍しくありません。さらに、吐き気・嘔吐、下痢等が起きるようになります。加えて、虫垂炎に関しては、進行の具合によって、カタル性虫垂炎、蜂窩織炎性虫垂炎、壊疽性虫垂炎に分類されます。最も軽度なのがカタル性で、炎症が虫垂の粘膜にのみ見受けられる程度です。蜂窩織炎性に関しては、炎症が虫垂の壁全体に広がるほか、内腔に膿が溜まっていきます。壊疽性が最も状態が悪い状態で、これは虫垂組織が壊死し、虫垂壁に孔が空くようになり、腹膜炎も発症しやすくなります。

検査について

虫垂炎を診断する際によく行われるのが血液検査です。虫垂は炎症を起こすと血液中に含まれる白血球の数が異常な程多くなるとされ、加えて、その数から炎症の程度も読み取れるとされ、非常に有用な検査と言えます。さらに、腹部CT検査や腹部超音波検査も併せて施して虫垂の腫大化等を確認します。

治療について

カタル性虫垂炎と診断された場合は、抗菌薬による薬物療法を施します。一般的に「薬で散らす」と呼ばれる治療法です。

そして、蜂窩織炎性虫垂炎、壊疽性虫垂炎と診断された患者様については、虫垂を切除する手術療法が検討されます。手術を選択する場合は2つあり、腹腔鏡手術と開腹手術があります。前者は、比較的炎症の程度が軽い場合のみの対応となり、腹部に数ヵ所穴を開け、そこから虫垂やカメラを切り取る器具を挿入しての手術となります。一方、後者の患者様等については従来から行われている開腹による手術が行われます。

大腸憩室炎

大腸憩室炎とは

大腸憩室は大腸の内壁が外側に向かって袋状に飛び出している状態のことを言います。腸内でこの憩室が形成されること自体は問題ありませんが、便が憩室内では溜まりやすく、細菌が繁殖しやすく、それが増えることで感染し、炎症を起こすと大腸憩室炎となります。

なお、大腸とは結腸や直腸の2つのことですが、その中でも憩室が発症しやすいとされる部位が、上行・S状結腸です。すなわち、これら部位に炎症が現れやすいのですが、憩室の数が単発の場合もあれば、複数の数が見つかるなど多種多様です。

ちなみに、大腸憩室炎を発症すると、上行結腸での発症なら腹部の右側、S状結腸での発症なら左下腹部の腹痛、便秘、下痢等の消化器症状が見受けられます。炎症が軽度のうちの症状は、周期的な下痢や腹痛、便秘等程度です。しかし、炎症がさらに進行すると、腹痛は持続的な強い痛みのほか、血便や発熱も現れ、腹腔内に便が漏出すると、結腸周囲炎や腹膜炎を併発するようになります。

検査について

患者様に見受けられる症状や訴えから大腸憩室炎が考えられる場合、腹部超音波検査やCT検査を行います。さらに、出血されている場合は、出血箇所を調べるための大腸カメラの内視鏡検査が行われることもあります。

治療について

軽度な憩室炎であれば、抗菌薬の内服や食事療法で治癒が可能です。しかし、炎症がひどい状態の場合、病院に入院しての絶食、抗生物質の点滴等を施していきます。加えて、憩室が破れ穿孔がある、腸に閉塞や狭窄がある、重度な腹膜炎という場合は手術療法が必要となります。

さらに、大腸憩室炎は再発の多い病気でもあるので、その予防対策として便秘になりにくい食生活を心がける、適度に運動する、十分な水分摂取等、日頃の生活習慣を見直していくことも大切です。

急性肝炎

急性肝炎とは

A、B、C、D、E型等の肝炎ウイルスに感染、また、薬剤、自己免疫等が原因となって、肝臓が短期的に炎症を起こしている状態を急性肝炎と言います。基本的に、これといった治療をしなくても治癒することがほとんどですが、同疾患を発症した1~2%程度患者様には劇症肝炎が現れるとも言われています。劇症肝炎は、発症後、肝機能が急激に低下するというもので、肝炎の症状が出てから8週間以内に肝不全症状(意識障害)が現れると言われています。なお、劇症肝炎が原因で最も多いと言われているのが、B型肝炎ウイルスに感染している患者様です。

ちなみに急性肝炎は、発症して間もない時期は、全身の倦怠感、筋肉痛、発熱、食欲不振等、一見、風邪と勘違いしやすいのも特徴です。加えて、時間が経過すると尿が茶色になる、皮膚や白目が黄色っぽくなる(黄疸)も見受けられます。なお黄疸がみられる頃になると発熱や倦怠感等の症状は治まっていきますが、劇症肝炎の場合は、逆にこれらの症状が強く出るようになり、ろれつが回らない、意識が朦朧とする等の症状も現れるようになります。

検査について

急性肝炎の診断をつける検査として、血液検査が行われます。これは何らかの異常が肝細胞にあると肝臓内の物質は血液中に漏出するようになるからです。主にALT、AST、ビリルビンの数値を計測し、これらの数値が高いと肝細胞が障害を受けていると考えられます。さらに、肝炎ウイルスへの感染有無、肝炎の程度を調べる検査等もしていきます。

治療について

急性肝炎と診断された場合でも、何か特効薬があるとか、手術が必要ということはありません。診断された患者様は入院をしてもらいますが、安静に努め、体を回復させていきます。食欲不振であれば点滴を行って健康状態を整えていきます。なお同疾患で見られる症状は、数ヵ月程経過するに伴って、改善していきます。

さらに、劇症肝炎の場合は、早期に治療を行う必要があります。この場合、短期間で大量のステロイドを使用するステロイドパルス療法、抗ウイルス療法、肝臓の働きを補うとされる人工肝臓補助療法等を行い、肝機能が回復していくのを見守ります。それでも状況が改善しない場合は、肝臓移植をする必要があります。

総胆管結石

総胆管結石とは

総胆管とは、総肝管と胆のう管が合流している部分を指します。ここに、結石が溜まった状態を総胆管結石と言います。結石は胆汁に含まれるビリルビン、コレステロールが結晶化したことで生まれたものです。胆汁が十二指腸へと流れる通路でもある総胆管に結石が生じると細菌もそこに留まるようになります。この状態を放置していると、重篤な感染症であるDIC(播種性血管内凝固症候群:血液凝固系の暴走)や敗血症等の発症にも繋がるため、注意が必要な疾患でもあります。

主な症状として、胆管に結石が入り込んで痛みが生じます。さらに、食後30分~2時間程経過した際に、吐き気・嘔吐、右上腹部の痛みが現れる場合もあります。さらに、胆管が結石に塞がれて感染を起こすことにより、急性胆管炎を発症することもあります。すると、ゾクゾクするような寒気、発熱、黄疸等の症状が現れます。これらの症状に心当たりがあるという方は、総胆管結石の可能性もありますので、一度ご受診ください。

検査について

総胆管結石の診断をつけるための検査として、腹部超音波検査、腹部MRI検査、腹部CT検査、超音波内視鏡検査(EUS)等の検査を行っていきます。なおEUSは胃カメラの上部消化管内視鏡を用いた超音波検査で、総胆管、胆のう、膵臓の内部の様子を観察するので、より高い精度で病変等を確認できるようになります。

治療について

治療は主に2つあり、外科的治療と内科的治療に分けられます。前者は、根本的に治癒したい場合に施されます。なお外科的治療には、経皮経肝的胆管結石除去術、内視鏡的胆管結石除去術、外科的手術等の方法があります。

内視鏡的胆管結石除去術は、同疾患の患者様に最もよく施される治療法で、まず胆管の出口を拡張することによって、結石を取りやすい状態にした後に内視鏡処置具を用いて、結石を除去していきます。加えて、経皮経肝的胆管結石除去術は、主に胃の手術を終えたばかりの方や胃カメラを十二指腸に挿入できない方向けの施術となります。まず、肝内胆管の場所を超音波で確認し、針をそこに向け刺してチューブを留置し、結石を除去するという内容になります。外科的手術については、上記の二つの手術と比べると患者様への負担も多くなりますが、その際は同時に胆のう摘出手術と行うことで、体への負担減や入院期間の短縮に努めていきます。

一方、内科的治療としては、胆石溶解療法、体外衝撃波の2つがあります。前者は、胆石溶解剤を施して胆石を溶かしていく治療で、効果のある患者様もいる一方、効果を感じない患者様も少なくありません。さらに再発率も高いとされています。後者は、結石があるとされる部位に向け、衝撃波を体外より当て、結石を破砕する治療法です。前者の治療法が困難とされる患者様に検討されます。

胆管腫瘍

胆管腫瘍とは

胆道は胆汁の通り道の総称です。胆道の範囲は、肝外胆管、胆のう、十二指腸乳頭部までに及びます。これらの上皮に発生する腫瘍が胆道がんとなりますが、発生した部位によって、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんとそれぞれ診断されます。さらに胆管がんは胆管内のどの部位に腫瘍があるかで、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんに分類されます。因みに、胆管がんは、膵臓がんと同様に治療が困難とされおり、転移しやすいという特徴があります。

現時点で発症原因ついては特定できていません。50歳を超えた頃から罹患率は増加していきます。初期症状は出にくいと言われていますが、病状が進行すると白目や黄疸、白色便、茶褐色の尿等が生じるようになります。加えて、かゆみ、腹痛、体重減少等の症状が現れるようになります。因みに、胆管がんになると、血液中のビリルビン濃度が高くなるので、尿検査の結果でビリルビンの数値が上昇していくようになります。

検査について

胆管がんの診断をつけるために、血液検査、腹部超音波検査、CT検査等を行っていきます。血液検査では、血液中に含まれるビリルビンの数値等を確認するほか、腫瘍マーカーも調べます。胆管がんには特異的なマーカーはありませんが、C19-9 やCEA等は診断をつけるための補助的役割をするとされています。CTや腹部エコー等の画像検査では、腫瘍の位置や範囲胆管の拡張の程度等を調べます。

治療について

胆管がんの治療としては、発生部位に関係なく、手術療法による切除が望ましいとされています。ただその方法というのは、先にも挙げた胆管がんの肝門部領域胆管がん、肝内胆管がん、遠位胆管がんの3つのタイプでそれぞれ異なります。

肝門部領域胆管がんは、肝臓の血管の出入り口と言われる肝門部付近にできたがんのことです。この場合は胆のうや肝臓、リンパ節を切除、膵臓も合併切除が必要になる場合があります。

肝内胆管がんは、肝内胆管にできるがんです。まず、肝内胆管とは、肝臓から十二指腸まで胆汁を運ぶ管のうち、肝臓内に位置する胆管で、この部位に発生するがんになります。発生部位が端の方であれば部分切除で済みますが、病状が進行時には、胆のう切除や周囲のリンパ節郭清が必要になることもあります。

遠位胆管がんは、十二指腸の近い部分の肝外胆管に発生するがんです。がんが膵臓にも広がりやすくなるので、十二指腸あるいは十二指腸に接している部分の膵臓を切除する膵頭十二指腸切除手術を施していきます。

膵腫瘍

膵腫瘍とは

膵臓にできるがんを総称した呼び名を膵腫瘍と言います。その中で最も発症しやすいとされているのが膵がんで、膵腫瘍を罹患している患者様の8割程度も占めるとされています。

さらに、膵臓に発生する腫瘍としては、膵内分泌腫瘍や膵管内乳頭粘液腫瘍もあります。速やかに手術を要するケースもあれば、経過観察をしながら様子を見て、大きくなったら切除する等、腫瘍のタイプによっては様々です。現時点で発症の原因については、特定されていませんが、喫煙、糖尿病、肥満、家族歴、慢性膵炎等が関係しているとされています。

主な症状としては、発症して間もない頃は症状が出にくいとされていますが、背中の痛みや腹痛が現れることもあります。ただ症状は軽く、一時的ですので自覚しにくいです。しかし、2~3ヵ月経過した後に再び同様の症状が現れるようになります。その時に、詳細な検査をして、膵臓がんが判明することもあります。また、体重減少や黄疸等の全身症状が見受けられるのであれば、病状がかなり進行していることが想定されます。

そのため、全身症状が現れる前に治療をしていきたいのですが、腹痛や背中の痛みは激痛でない限りは多くの人は重症とは捉えず、背部痛であれば整形外科の対応疾患と考えることもあると思います。ですが、長期間、背中に鈍痛を抱えているのであれば、内科も一度ご受診されることもお勧めします。

検査について

膵腫瘍、若しくは膵臓を調べる際に行われるのが、CT検査や腹部超音波検査です。膵臓や肝臓、腎臓、胆のう等の周囲の臓器に病変の有無を確認していきます。そして、診断をつけるのが困難であれば、超音波内視鏡検査、MRI、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)等の検査も行います。

治療について

膵臓がんと診断されたら早急に治療が必要となります。その場合、すべてのがん細胞を取りきる手術療法を施していきます。手術方法については、がんができた部位によって異なります。具体的には、膵臓の右側である膵頭部にがん細胞が発生している場合は、膵頭十二指腸切除術が施されます。なお、膵体尾部にがんがある場合は、膵体尾部切除となります。

便秘

便秘とは

排便が困難、または、スムーズでない状態のこと便秘と言います。具体的には、排便の回数が週に3回以下である、硬い便が排出されることで出血や痛みが発生する、残便感が残る、腸内に便が溜まっていても便意を感じないといった状態を指します。さらに、便秘は、多くは女性の患者で、年を経るごとに上記のような症状が現れていくこともあります。

原因は、いくつかあると言われています。例えば、腸の動きが弱い、日頃の食事や運動不足といった生活習慣、加齢や何らかの病気による慢性の便秘をはじめ、環境の変化によるストレスが影響する一過性の便秘、大腸の蠕動運動の低下による弛緩性便秘、直腸に便が溜まっても便意を感じない直腸性便秘などがあります。また、他の病気の一症状として生じる器質性便秘もあります。

因みに、排便に関する症状以外では、食欲が落ちる、おならが出やすい、腹痛、お腹が張る、疲れやすい、口臭・体臭がきつくなる等があります。

検査について

ほとんどの場合、患者様を問診していくことで診断をつけます。しかし、器質性便秘の可能性があると医師が判断すれば、大腸X線バリウム検査や大腸カメラによる大腸内視鏡を施していきます。

治療について

生活習慣の改善と薬物療法で治療してきます。生活習慣の見直しにおいて、大切なことが食事で、主にこまめな水分補給や食物繊維の多い食品を摂る等をしていきます。さらに、不規則な食事は便秘を招きやすくするので、規則正しく食事を摂り、栄養バランスにも重きを置くことも重要です。加えて、血行を促進させ、排便に用いる筋力もつけるために運動も取り入れるようにします。さらに、ストレスを軽減することも便秘の予防には重要です。

薬物療法としては、浣腸や下剤を使用して、直腸に溜まった便を出しやすくします。そして、硬い便が出る患者様には、潤滑性下剤を使い、便を軟らかくします。また、腸内の蠕動運動を活発化させる必要のある患者様には、刺激性下剤を使用して、小腸や大腸を直接的に刺激していきます。さらに、器質性便秘の疾患を持つ患者様には、原疾患の治療も併せて行います。

慢性胃炎

慢性胃炎とは

胃粘膜に慢性的な炎症が続いている状態を慢性胃炎と言います。長いと一ヵ月以上続く胃炎は、これが長期間繰り返されるようになります。しかし、急性胃炎が慢性化することはありません。原因としてストレスの影響、ピロリ菌に感染、刺激の強いものを好んで食べる、高脂肪食の過剰摂取等の食生活の乱れ、生活が不規則、長期的なアスピリンや非ステロイド性抗炎症薬の使用等が挙げられます。

主な症状は、食欲不振、胃の不快感や胃もたれ、吐き気、胸やけ、腹痛、膨満感等ですが、自覚症状がない状態で病状が進行することもあります。加えて、慢性胃炎は、症状の程度によって、表層性、委縮性、肥厚性の3つのタイプに分けられます。なお、委縮性胃炎と言われる胃粘膜が萎縮し、胃液の分泌が不足する状態がよく見受けられます。

検査について

慢性胃炎の原因は、ピロリ菌感染によるものがほとんどです。そのため感染の有無を調べる上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行います。同検査では、内視鏡で胃粘膜の一部を採取し、ピロリ菌の有無を検査していきます。

治療について

原因がピロリ菌の感染によるものであれば、除菌治療を行います。さらに、ストレスによって引き起こされている場合は、ストレスの根本原因を解決することで症状が改善されるようになります。上記以外の原因の場合は、患者様の症状に合わせて、適切とされる胃酸分泌抑制薬、粘膜保護剤等の内服薬を用いていきます。加えて、胃や腸に負担をかけるとされる食生活の乱れを見直し、節酒や禁煙も行う等して、日常生活の改善を図ることも必要です。

急性胃腸炎
および感染性胃腸炎

急性胃腸炎
および感染性胃腸炎とは

急性胃腸炎とは、主に胃腸の粘膜が、病原性大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ等の細菌やロタウイルス、アデノウイルスノロウイルス等のウイルスやアメーバー 等の寄生虫の病原体に感染し、それによって炎症が起きている状態です。因みに、病原体による感染性胃腸炎以外にも刺激の強い食品を好んで食べる、ストレス、カフェインやアルコールの過剰摂取、特定の薬剤(ステロイド薬、解熱鎮痛剤、抗菌薬等)等も発症の原因となります。

発症することで、腹痛、発熱、吐き気・嘔吐、下痢等が現れ、また、病状が進行すると下血や吐血もみられるようになります。因みに、嘔吐や下痢が続くことで、脱水症状を引き起こしやすくもなります。特に、幼児や高齢者はこのような状態にならないように注意が必要です。なお、乳幼児に罹患しやすいロタウイルスによるウイルス性感染性胃腸炎があるのですが、同疾患に感染すると米を研いだ際に出るような白っぽい水分を含む下痢便が見受けられます。

検査について

はじめに問診をしていきます。その後、血液検査をしていきます。患者様が希望される場合は、ウイルス検査キットを使用した検査も実施します。

治療について

原因がウイルス性の感染性胃腸炎の際は、ウイルス自体に効く薬というのはありません。そして、症状を和らげる対症療法として、吐き気止め、整腸剤、解熱薬等を使用していきます。下痢止めは腸内のウイルスの排出を止めてしまうため、使用は控えます。加えて、細菌性の感染性胃腸炎である場合、抗菌薬を用い、点滴や内服をしていきます。しかし、原因菌によっては、使用しないこともあります。また、嘔吐や下痢なので脱水症状が起きやすくなっており、水分をこまめに摂取するようにしてください。

B型肝炎

B型肝炎とは

ウイルス性肝炎の1つで、B型肝炎ウイルスに感染し、発症されていることをB型肝炎と言います。同ウイルスに感染した患者様の9割程度は、感染した直後から症状が現れるようになりますが、自然と治癒します。このような肝炎を急性B型肝炎と言います。残りの1割程度の患者様は慢性化する慢性B型肝炎に分類されます。

感染経路として、急性B型肝炎ウイルスの患者様に関しては、主に感染者との性行為や感染者からの輸血、注射針の使い回し等の血液感染が挙げられます。慢性B型肝炎に関しては、感染者である母から子へ感染する母子感染、そして、HBVキャリアの方が発症するというケースがよく見受けられます。

また、HBVに感染すると個々で異なりますが、潜伏期間が1~6カ月程度を経てから発症するようになります。急性B型肝炎の患者様に関しては、全身に倦怠感、吐き気・嘔吐、食欲不振等の症状が現れるようになります。さらに、慢性B型肝炎は特徴として、自覚症状が出にくいので、病状を進行させやすくなります。放置が続けば肝硬変や肝がんを発症させてしまうケースもあります。ですので、検査を定期的に行う等、早期の発症に気づくことが重要です。なお、慢性化することで黄疸等の症状が現れるようになります。

検査について

B型肝炎ウイルス感染の有無を調べる際は、血液検査を実施していきます。そして、抗体の有無、肝炎の発症や炎症の程度を確認していきます。また、医師が必要と判断した際は、CT検査や腹部超音波検査、MRI検査等の画像検査によって肝臓の様子をみていきます。

治療について

急性B型肝炎は、9割近くの患者様が自然に治癒しますが、全体の1%の患者様に劇症肝炎が生じることもあります。その際は、劇症肝炎に対する治療が必要となります。一方で、慢性B型肝炎の患者様におきましては、抗ウイルス療法として、核酸アナログ製剤やインターフェロン等を組み合わせた薬物療法を施していきます。

また、小児の定期予防接種にはB型肝炎ワクチンの接種があります。つまり、B型肝炎の発症やHBVウイルスによる母子感染を防止するためのワクチンです。計3回、乳児の間の接種が推奨されております。加えて、推奨期間外であっても、全額自己負担の任意接種とはなりますが、接種自体は可能です。接種をご希望される方は、お気軽にご相談ください。

C型肝炎

C型肝炎とは

C型肝炎ウイルスに感染し、発症したウイルス性肝炎をC型肝炎(HCV)と言います。なお、日本で慢性肝炎を発症している約70%の患者様が同ウイルスに感染したことによるものです。さらに肝硬変や肝がんを発症させる原因の約80%がHCVであるともされています。

感染経路としては、感染者の血液を介して感染すると言われ、輸血、臓器移植、入れ墨、注射針の使い回し等が挙げられます。なお、母子感染や性行為、唾液等による感染のリスクは低いと言われています。

代表的な症状ですが、HCVは感染後、潜伏期間が2週間~6ヵ月程度を経るとされ、感染初期は自覚症状が出にくいと言われています。しかし、症状が現れる場合は、発熱、全身の倦怠感、食欲低下等が見受けられます。因みに、同疾患による約3割の患者は、体内からウイルスが排除される等で自然と治癒するようになりますが、残りの7割の方は慢性化するようになります。そして、発症に気づかないまま病状を進行させると、いずれ肝硬変を併発していきます。また、同疾患が進行すると、食欲不振、全身倦怠感、足がむくむ、黄疸などの症状が見受けられるようになります。

検査について

診断をつける最も有用な検査が血液検査です。同検査によって、抗体の有無や炎症の程度、肝機能の状態を確認します。加えて、医師が必要と判断した場合に腹部超音波検査やCT検査、MRI検査等の画像検査も行い、肝臓の炎症の有無等を調べていきます。

治療について

HCVを体内から排出していくことを目的として治療していきます。この際、主にインターフェロンによる薬物療法を実施します。治療の際は、リバビリン、シメプレビル、ペグインターフェロンの3つの薬剤を併用していき、週1~3回の間隔で用いていきます。また、同薬の投与における副作用として、倦怠感、発熱、食欲不振、関節痛等の症状が現れることがあります。