風邪症候群
(急性上気道炎)

風邪症候群とは

様々な病原体が鼻から喉、気管の入り口にかけての上気道(空気の通り道)に感染し、それらの部分に炎症を起こしている状態を総称した呼び名が風邪症候群で、一般的に風邪と呼ばれることが多く、多くはウイルスが原因となるものです。

症状としては、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、喉の痛み、咳、痰、頭痛、発熱 等で、これ以外にも、嘔吐・吐き気、腹痛、下痢 等の消化器症状を伴うことがあります。通常、症状は1週間以内で改善していきます。

治療においては、鎮咳薬や去痰薬 等、様々な症状を軽減するための薬を組み合わせて処方いたします。加えてウイルス感染に引き続き、細菌が引き起こす二次感染を予防するため抗生物質を組み合わせて処方することもあります。

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急性気管支炎

急性気管支炎とは

気管支とは、気管から肺に向けて左右に枝分かれした部分を言います。ウイルスなどがこの気管支の粘膜に感染して、炎症を引き起こしている状態が急性気管支炎です。

咳や痰が出る以外、発熱、食欲不振、全身倦怠感といった症状もみられることがあります。ほとんどの場合、風邪による上気道の炎症が気管支へと波及することが原因で発症します。

治療においては、対症療法が中心で鎮咳薬や去痰薬、消炎鎮痛薬、解熱剤 等を使用します。インフルエンザの場合では抗ウイルス薬を使用し、細菌感染の場合では抗菌薬が使用されることもあります。

インフルエンザ

インフルエンザとは

インフルエンザは、一般の風邪と比べると症状が重い疾病です。その症状が3~7日間続いた後、治癒に向かいます。しかし、肺炎や気管支炎を併発しやすく、脳炎や心不全に至り、重症化する場合もあります。

インフルエンザに罹ると38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、寒気 等の症状がみられます。加えて、風邪と同様に、鼻水、咳、喉の痛み 等の症状もみられます。また、子どもの場合、中耳炎や痙攣、稀に急性脳症、免疫力の低下している方や高齢者 等では肺炎を併発することもあります。

患者様にインフルエンザ症状の疑いがある場合、迅速検査キットを使用して診断します。その結果は5分程度で判明します。

主に治療は、安静に努めながらの対症療法が一般的になります。熱や痛みに関しては、解熱薬、咳や喉の痛みには鎮咳去痰薬や気管支拡張薬などを使用します。さらに、感染初期であれば抗ウイルス薬を使用する場合もあります。

喘息

喘息とは

気管は、肺へ至ると左右に枝分かれしますが、その部分のことを気管支と言います。この気管支に慢性的な炎症が起き、それが原因となり、空気の通り道が狭窄し、呼吸がしにくい状態となり、「ヒューヒュー」、「ゼーゼー」、どの呼吸音(喘鳴)がみられるようになります。この症状を喘息(気管支喘息)と言います。

アレルギー反応を引き起こすことで発症することがほとんどですが、例外もあります。アレルギーの場合は、ダニ、ペットの毛、カビ、細菌 等のハウスダストや、スギ 等の花粉、特定の食べ物 等があります。アレルギー以外では、喫煙、風邪をはじめとする感染症、ストレス 等です。

主な症状は、「ヒューヒュー」、「ゼーゼー」、などの呼吸音(喘鳴)ですが、その他、全身や肩で呼吸をしないと苦しい、痰が増える他、外的な刺激に対して気管が過敏な状態となり、喘息発作やチアノーゼと呼ばれる呼吸困難から血液中の酸素濃度の低下が引き起こされることもあります。

喘息発作は、夜間から明け方にかけて起こりやすく、感覚としては息が吐きづらく喉に物が詰まっているような状態に陥ります。

診察では喘息の診断をつけるための検査として、痰検査や血液検査、呼吸機能検査や胸部レントゲン撮影 等を行い、総合的に判断していきます。

喘息発作を抑える治療としては、気管支拡張薬や痰が切りやすくなる薬を使用する治療法があります。さらに喘息発作の原因となる慢性的な気管支の炎症を抑える治療としては、吸入ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬による治療法が基本となります。

喘息の治療は、自らが治ったと判断して薬物治療を止めてしまうと再び症状が繰り返されることがあります。必ず医師の指示に従ってください。

COPD

COPDとは

COPDとは慢性閉塞性肺疾患のことを指します。COPDは、主に有害な成分 等が含まれるタバコを長期に渡り吸い込むことによって気道が狭くなり、気道の先端にある肺胞が破壊される病気です。上手く酸素と二酸化炭素の交換を行えなくなるため、ガス交換の効率が悪くなり、運動や日常生活にまで影響を及ぼすこともあります。COPDの進行速度はゆっくりですが、肺胞は一度壊れると元には戻りませんので、呼吸器内科を早急に受診するようにして下さい。

COPDは、咳や痰が出るようになるとともに、軽い運動や坂道をゆっくり登っただけでも息切れが起きます。激しい運動を伴う場合、誰もが息を切らしますが、COPDになると、軽い運動でも呼吸機能に影響が出やすくなるのです。このような症状はCOPDがある程度進行してから現れます。肺の障害は知らぬうちに進行しているのです。そのため、比較的に症状が軽い方に対しても当院では、スパイロメーター 等の医療機器を使って、肺の機能がどのくらい保たれているかを検査いたします。

まず喫煙者は、とにかく禁煙する必要があります。さらに、効果が長く持続するタイプの気管支拡張薬を使い、咳や息切れを軽減させます。COPDが進行すると、薬物療法のほかに呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法が必要になってきます。そのような状態にならないで済むよう、お早めに治療を受け、状態を悪化させないようにしましょう。

肺がん

肺がんとは

1998年以降のがんで亡くなる日本人の死亡原因の第一位が肺がんであり、2011年には7万人を超える死亡者が肺がんによるものです。患者様の多くは主に60歳代~70歳代にかけて発症し、約7割がこの2つの年代だけで占めています。

肺がんとは、肺の細胞が何らかの原因でがん化したものです。症状は初期の状態で出ることは少ないので、ある程度進行してから見つかることがほとんどです。進行するにつれて、周囲の組織を破壊しながら肺がんは増殖し、後にリンパや血液の流れに乗って転移していきます。肺、脳、骨、肝臓、副腎 等が転移しやすい臓器です。

一般的な肺がんの症状は、ほかの呼吸器疾患の症状と区別がつかないことがほとんどですが、長期に渡る咳、血痰、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューと音がする)、胸痛、声がれ、息切れ、発熱などがみられる場合は一度ご来院をお勧めします。

一口に肺がんと言いましても「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に分類され、非小細胞肺がんはさらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「腺扁平上皮がん」等に分類されます。

肺がんは、リスク因子として喫煙、高齢、大気汚染、石綿(アスベスト)ばく露といったものが挙げられています。喫煙と高い関連性があるとされる肺がんが、非小細胞肺がんの中の扁平上皮がんで、かつては男性に多いとされていたのが、近年女性への発症が多くなっています。肺がん患者様全体の約20%がこの種類のがんを発症しています。そして、一番多くの患者様が発症している肺がんは肺の末梢に発生する腺がんで、患者様全体の約60%を占めており、非喫煙者も発症します。また、小細胞肺がんは、かなり進行が進んでからでないと発見しにくいものではありますが、放射線治療や抗がん剤による効力が高いがんでもあります。

肺がんの診断を行う検査には、喀痰を採取して、がん細胞の有無を調べる喀痰検査、レントゲンやCTで確認しながら、皮膚の上から細い針を病変へ突き刺して細胞を採取する経皮肺生検、気管支ファイバースコープ(内視鏡)を口や鼻から挿入し気管支の様子を直接観察する検査のほか、気管支ファイバースコープ検査の際、肺の組織を採取し、がん細胞の有無を調べる検査等があります。

肺がんであると診断された場合は、病期診断を行い、がんの進行度がどれくらいであるかを確認し、ステージに伴った治療を行うことになります。主に、抗がん剤による治療や手術療法、放射線療法などが行われます。このような治療や入院が必要な場合は、提携先の専門医療機関を紹介します。

胸膜炎

胸膜炎とは

胸膜が炎症し、水が胸膜腔に溜まり、呼吸困難、胸の痛み、咳や発熱 等の症状を起こす疾患です。

胸膜とは、肺、心臓、気管、気管支、血管等の臓器を被っている胸膜と、さらに胸の壁を形成している肋骨や肋骨の周りの筋肉を被っている胸膜があり、2重構造となっています。

この胸膜があることで肺は空気を漏らすことなく、円滑に膨らんでしぼむことができるのですが、この部分に炎症が起きてしまいます。 炎症が原因で胸の痛みを感じることが多いのですが、炎症の原因としては細菌感染や結核による肺炎をはじめ、がん、膠原病 等が引き金となり起きるケースが多くなっています。炎症を起こすと2重構造になっている胸膜の間にある胸膜腔という場所に胸水が溜まるようになってしまいます。これが呼吸困難を引き起こし、原因によっては咳や発熱等もみられるようになります。

治療としては、原因となる病気に対しての治療が第一ですが、水が胸に溜まりにくくする治療も行います。胸水が多い場合は、胸の表面からボールペンほどの太さのチューブを入れ、そのままの状態にし、溜まった胸水を身体の外に出すドレナージという方法により、水を排出するようにします。

原因の病気に対しての治療については、膠原病であればステロイド薬、肺炎が原因であれば抗菌薬を用いる等します。がんが原因であれば、化学療法や胸膜腔を塞ぐ施術が行われることもあります。

気胸

気胸とは

気胸は、肺を覆う胸膜が何らかの原因で破れてしまい、胸腔内に空気が溜まってしまっている状態を指します。空気が入ることで、肺は空気に圧されて小さく縮み、突然の胸の痛み、乾いた咳、呼吸困難等を引き起こします。

自然気胸とは、気胸の中でも多くみられるもので、肺に生じたブラと呼ばれる嚢胞に穴が開く特発性の症状を言います。特に10〜20代の背が高く痩せた若年層の男性や喫煙者に多いのが特徴です。肺の虚脱が胸部X線検査で確認されれば診断がつきます。また、肺がん、肺気腫、肺線維症等、肺の病気が原因で発症する場合があります。これを続発性気胸と言い、特に高齢者に多い疾患です。

症状が軽度の肺気胸であれば、定期的に胸部X線検査を行って経過観察をし、自然治癒を待つことになります。中等度以上になると空気を胸膜腔から抜く処置をします。こうした保存的治療で治らない重度の気胸、さらに再発を繰り返す気胸には、手術が検討されます。

肺結核

肺結核とは

肺結核は、結核菌が空気感染で体内に入り込み、免疫力の低下等が重なると発症する呼吸器感染症です。初期症状としては風邪とよく間違えられますが、2週間以上の長期に渡って、咳や痰、微熱が長引くようであれば、早めに当院を受診されることをお勧めします。症状については、長引く咳、痰、発熱の他、倦怠感、体重減少が見受けられ、病状が進行していくと、息苦しさ、血痰、喀血、胸痛等がみられます。また、結核菌に感染したとしても発病しないこともあり、咳や痰が出るわけでもありませんので、人を感染させることもありません。

また肺結核には、感染してすぐに発病する初感染結核症と感染してから長時間が経過してから発病する既感染発病の2つのタイプがあります。前者は若年層に多く、結核菌に新たに感染してすぐに発病するタイプです。一方の後者は感染してもすぐに発病せず、免疫力などが低下してから発病するタイプで、このような患者様は高齢層に多く見られます。治療としては、一般的に6ヵ月~9ヵ月程、抗結核薬による薬物療法を続けます。

気管支拡張症

気管支拡張症とは

気管支が拡張する疾患で、一度拡張してしまった気管支は元に戻すことはできません。慢性的に気道が病原体に感染していることや、先天性、遺伝的要因等が拡張する原因として挙げられます。

一旦、気管支が拡張すると細菌が気道に侵入してさらに感染を起こしやすくなります。また拡張した部分は痰が溜まりやすくなり、痰が伴うことで咳も出やすくなります。そして血痰等もみられることがあります。主な症状は、発熱、だるさ、咳、痰をはじめ、胸痛、呼吸困難等です。治療としては、去痰薬や気管支拡張薬等を使用します。